相続関係

あまり知られていないけど立派な遺言形式 「秘密証書遺言」のはなし

はじめに

遺言書という言葉は皆さん聞いたことがありますよね?さまざまな種類があり普通形式と特別形式の遺言があることは前回おはなししました。

今回は普通形式の中の「秘密遺言書」についておはなししたいと思います。なお普通形式遺言では他に「公正証書遺言」「自筆証書遺言」があります。この2つは割と有名かと思います。しかし今回お伝えする「秘密証書遺言」は使いようによっては非常に有用です。

それぞれの遺言書にメリットとデメリットが存在しており特徴を把握しておくことで自分に合った遺言書を作成ができます。

今回は秘密遺言書について詳しくお伝えしていきます。

こんな人に読んでほしい記事です

・秘密遺言書ってなにか知っておきたい人

・秘密遺言書の書き方を知りたい人

秘密遺言書とは?

秘密証書遺言とは、本人以外遺言内容を秘密にしつつ、公証人と証人2人以上に遺言書の「存在」を証明してもらいます。

証人が存在しているため「この遺言書は誰かが偽装したので無効」といったトラブルがなく、遺言書としてしっかりと効力を発揮ができます。

公証人と証人2人以上に遺言書の「存在」の証明してもらいながら、公証人、証人、相続人を含め、本人以外内容を見ることができないので、遺言内容を「秘密」にすることができます。

秘密遺言書の書き方のルール

秘密遺言書は本人以外には内容を隠すことができるため、公証人も内容を知りません。そのため書き方の不備があったり、手続きを誤ると無効になってしまうのでしっかりと理解をしておく必要があります。

秘密遺言書のルールとしては以下の2つがあげられます。

1.証人2人の選定が必要
2.本文はパソコン入力や代筆がOKだが署名は必ず手書き、押印必要
3.遺言書を封筒に入れて遺言書に押印した印と同じもので封印する必要がある。

一つずつ解説していきます。

1.証人の選定が必要

秘密遺言書は遺言が本人のものであることを承認してもらう手続きを公証役場で行います。

その際に証人が2名必要となります。しかし誰でも証人になることができず一定の条件が設けられています。

証人になれない人(証人欠格)

・推定相続人、受遺者及びその配偶者並びに直系血族
・未成年
・公証人の配偶者や4親等以内の親族
・公証役場関係者

一般的には遺言内容のチェック段階から司法書士や弁護士等の専門家に証人を頼むケースが多いのが特徴です。信頼のできる人を証人として選定しましょう。

2.本文はパソコン入力OKだが署名は必ず手書き

自筆の遺言書である必要がなく、パソコンで入力した物でも効力を発揮します。

「パソコンで入力すると本人が書いたものかわからない」といった事があげられます。そのため最後の署名は直筆で書くことが義務付けられています。

最後の署名は本人が書く必要がありますが、その他の本文は代理の方が入力しても問題がありません。

また押印も必要であるため、必ず「自筆の署名」と「押印」をするようにしましょう。

押印の印鑑は封をした後にも必要になるので、どのハンコで押印したかを必ず覚えておきましょう。

体が不自由であったり、自筆の遺言書を書くことができない人にとって秘密遺言書は有効な手立てといえるでしょう。ただ公正証書と異なり公証人の遺言内容のチェックが入らないので内容が無効にならないようにすることが一番の注意点だと思います。

秘密遺言書作成の流れ

秘密遺言書作成の流れを簡単に書くと以下の通りです。(民法970条)

1.遺言者が遺言を作成し(本文は他人の代筆やパソコン入力したものを印刷したものでも可能)、その遺言書に署名・押印をします

2.遺言者が、その遺言を封筒に入れ、遺言で用いた印で封印をします。

3.遺言者が、公証人と証人2人以上の前に封筒を提出し、自己の遺言であることと氏名住所を申述します。

4.公証人が、その遺言に提出した日付及び、遺言の申述(自己の遺言であること及び氏名住所)を封筒に記載し、公証人、証人、遺言作成者本人が封筒に署名押印します。

流れとしては以上です。

秘密遺言書の特徴やルールをしっかりと理解したうえで作成を行っていきましょう。

不備等があると無効になるため、専門家に相談するのも一つの手段です。

自分の死後に争いが起こらないようにしっかりと遺言は残すようにしてきましょう。