相続関係

今から相続準備?!法定相続人って? 愛する人に遺したい

自分はまだ若いし元気だから大丈夫。本当でしょうか?周りの人達もそう思っていたのに、ある日突然ご不幸にみまわれる事も珍しくありません。遺されたご遺族様のトラブル解決を専門家としてお手伝いしてきた私からすれば、「まだはもうなり」。ご家族をお持ちであれば、相続について考える機会を持つことは大切だと考えます。

「私にもしもの事があれば、誰が相続するの?」という事についてお伝えしていきます。

[1.相続の対象は誰]

あなたの財産を相続するのは誰でしょうか。法定相続人という、あらかじめ相続対象者として決まっている方々と、それ以外のあなたが任意に選べる方々があります。

<1−1 法定相続人>

法定相続人とは、民法で相続対象者として定められている方です。

(1−1−a 法律により自動的に相続人となる方達)

1−1−a−ア 配偶者

ご主人にとっては奥様。奥様にとってはご主人の事です。入籍することで、お互いに相続する権利を得ています。

1−1−a−イ 子

出生届を出したり、養子縁組をされることで戸籍に載せることで、相続する権利を得ます。奥様が妊娠中のお子様にも、権利はあると考えられています。

離婚した配偶者の方が連れて行ったお子様にも、相続権はあります。

法律上の婚姻関係がない女性との間にできた子供(非嫡出子)であっても、認知をされれば(認知子)相続の権利を得ます。

今の民法では、実子、養子、認知子は相続について、同じ権利を持っています。

1−1−a−ウ 親

お子様がいらっしゃらず、親御様がご存命の場合、相続人となります。

1−1−a−エ 兄弟

お子様がいらっしゃらず、親御様が既にお亡くなりの場合、相続人となります。

(1−1−b 手続きにより法定相続人になれる方達)

あなたが手続きをすることにより、法定相続人になれるのは次の方達です。大切に思っていても手続きを先延ばしにしたために、相続する事ができなければ取り返しがつきません。「愛情があれば手続きを」と思う場面はいくつもありました。

1−1−b−ア 自分の婚外子(まだ認知をされていない方)

先程も書きましたが、婚姻関係を持たない女性との間に産まれた子供は、認知をすることにより子として相続の権利を得ることができます。認知は、あなたが生前に認知届を出す、あるいは遺言に書くことにより行う事ができます。現実には、遺言書で初めて婚外子の存在を知り、相続される方達間でトラブルの原因になる場合もあります。

1−1−b−イ 同棲、事実婚のパートナー

籍を入れていない同棲、事実婚のパートナーの方には、相続の権利はありません。入籍することにより配偶者として相続の権利を得ることができます。様々なご事情で入籍できない場合は、遺言で財産を分ける方法もあります。

1−1−b−ウ 配偶者の方の連れ子

配偶者の方があなたと結婚する前に授かっているお子様(連れ子)は、養子縁組によって、子として相続の権利を得ることができます。

<1−2 法定相続人以外の方>

次の方に財産を遺したい場合は、遺言で指定する必要があります。

(1−2−a 離婚した配偶者)

離婚した配偶者の方は、離婚した時に相応の財産を分け与えたと考えられます。「苦労ばかりかけて何もしてやれなかった」などと思われる場合は、遺言で財産を分ける事ができます。

(1−2−b 第三者、団体)

いつも世話をしてくれる親切な近所の方といった第3者や、自分が支援したい団体については、遺言でお礼をしたり、寄付をするという方法も取れます。

[2.法定相続人はどのように相続するのか]

それではもしあなたが遺言を遺さずこの世を去ったとしたら、財産はどのように相続されるのでしょうか。

<2−1 相続の割合>

民法では、法定相続人が財産を受け取る割合が定められています。

(2−1−a 配偶者と子供)

あなたに配偶者とお子様達がいらっしゃれば、配偶者とお子様達で1/2ずつ相続します。

お子様達が3人いらっしゃれば、一人あたりは1/2÷3=1/6ということになります。

前に書きましたように、実子、養子、認知子の相続する権利は同じです。

配偶者が先立たれている場合はお子様がすべて相続されます。

(2−1−b 配偶者と自分の親)  

お子様がいらっしゃらず、あなたの親御様がご存命の場合は、あなたの配偶者が2/3、親御様が1/3の割合で相続します。

あなたに配偶者がいらっしゃらない場合は、親御様がすべて相続されます。

(2−1−c 配偶者と自分の兄弟)

お子様がいらっしゃらず、親御様も亡くなられておいでですが、あなたにご兄弟がいらっしゃる場合、あなたの配偶者が3/4、ご兄弟全員で1/4の割合で相続します。

あなたに配偶者がいらっしゃらない場合は、ご兄弟がすべて相続されます。

<2−2 お子様がお亡くなりの場合は代襲相続>

もし、あなたのお子様が先にこの世を去られ、その方のお子様、あなたからみてお孫さんがいらっしゃる場合、お孫さんはお子様の相続する権利を引き継ぎます。お子様、お孫さんがこの世を去られて、ひ孫がいらっしゃる場合、ひ孫さんに相続する権利が引き継がれます。

これは代襲相続として法律で定められています。

又、お子様がなく、親御様もご兄弟もお亡くなりになっているが、ご兄弟の子供(あなたからみて甥御さんや姪御さん)がいる場合、甥御さんや姪御さんもご兄弟の相続する権利を引き継ぎます。ただし、甥御さんや姪御さんもお亡くなりになって、その子供たちだけという場合は相続はされないとされています。

<2−3 法定相続人の最低限の取り分>

ここまでお読みになって、「〇〇には同居して世話をしてもらったから、その感謝の気持ちで取り分を多くしたい」、「△△には借金を肩代わりさせられた」といった理由で、相続する方の取り分を調整したいとお考えかも知れませんね。

そういった調整は遺言で可能ですが、法定相続人のうち配偶者、子、親には遺留分として、それぞれが相続する権利の1/2は最低限受け取れると法律で保証されています。

[3.元気な時にやっておくべき事]

この仕事をしていると「愛があるなら手続きで示そう」と思う事が多いです。今なら1時間もかけずにできることが、その時が来たら全くできなくなってしまうわけです。

それでは、相続で遺された人のために、今、あなたがやっておくべきことは何でしょうか?

<3−1 愛する人を法定相続人にするための手続き>

養子縁組、入籍、認知などの手続きは、相手の方や他の家族と

話し合って、早いうちにやっておかれることをお勧めします。入籍は難しい、とても婚外子の話はできそうもないといったご事情がある場合は、遺言による手続きを考えておいた方が良いです。

 

<3−2 ご自分の財産の種類と価値の把握>

ご自分の財産を一覧表に書き出してみるのも、大切な事だと思います。相続は不動産、貯金といったプラスのものだけでなく、住宅ローンや事業資金の借り入れといった、返済が必要なマイナスのものもあるからです。近年では海外のネット口座を利用してのFXなどの投資、仮想通貨のウォレットといったご本人しか存在を知らない形の資産も増えてきています。もしもの時に、相続される方達がアクセスできるようにしておかないと、せっかくのあなたの努力が誰にも知られず消えてしまう事にもなりかねません。

 

<3−3 誰に何をどうやって相続させるかのプランニング>

相続される方ひとりひとりについて、これまでやってこられた事を考えると、結婚費用、住宅購入資金の援助といった大きな金額を出してあげた事はなかったでしょうか。又、お子様が学生の場合、これから進学や結婚で費用がかかる事も予想されますね。そうした事を加味し、それぞれの遺留分を考えに入れて、ひとりひとりが受け取る金額を調整する事は、相続人同士のトラブルを避けるために重要です。

相続は法定の割合で遺産を分割すれば良いだろうと思われるかもしれませんが、実際に分割する話し合いの席では「私は公立の学校だったけど、○○は私立だったからたくさん金を出してもらった」といった、感情を交えた争いになる事も少なくありません。そうしたトラブルが起きないように、調整を考えてあげることも愛情です。

又、財産の分割が難しい場合には、前もって、家族で話し合っておくことが大切です。

例えばあなたが地方で家と一体となった店舗でご商売をされており、お子様の一人は同居して商売を手伝っているが、もう一人のお子様は都会でサラリーマンをやっている。あなたには貯金もなく、相続させる財産としては家と一体となった店舗しかない、といった場合です。

この場合、法定相続を単純に適用すると、サラリーマンをやっているお子様に財産を分けるためには、家を売ってそのお金を分けるしかありません。すると商売を手伝っていたお子様は仕事を続けることができなくなってしまいます。

このようなケースはあなたを含め、家族全員で事前に話し合っておくことが、後々のトラブルを避けるために必要だと考えます。

 

<3−4 専門家に相談する価値>

ここまでお読みになられて、相続してもらうのも簡単ではないと感じられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。もしもの時にトラブルを避けるために遺言を書いておこうというのも正しいご選択です。ただし、遺言で認知や財産の分け方を指示する場合、その遺言の書き方に問題があれば、遺言が無効となる事もあるのです。

私達専門家にご相談していただき、お手伝いをさせていただく事によって、多少の費用がかかっても、あなたの想いが正しく相続される方に伝わり、トラブルにより家族が争う事を可能な限り抑える。その価値はお金には替えられないものだと思います。