相続関係

子どもが小さいときにも遺言書を書いておいた方がいい理由

はじめに

皆さんは、死ぬ間際ではなく、お子さんが小さい時にでも遺言書を作りたいと思いますか?

遺言書を作るというとなんだか資産家のおじいさん方が作るというイメージでがあるかと思いますが、私はそうは思いません。今回は、その理由をお伝えします。

遺言書の必要性

 遺言書は、わたしたち庶民にとって重要です。人生が晩年に差し掛かる人たちは遺産がたくさんあって相続人間での「争族」を防ぐ目的があるかと思いますが、まだ子供が小さいときには相続手続に不要なお金と時間と労力がかからないようにする目的の方が大きいのです。

 まだ子どもが小さいということは、もしお父さんが死んでしまった場合、奥さんもまだある程度若いことが想定されます。生命保険はすぐに降りますが、預貯金や、マイホームがある場合の名義変更等については、家庭裁判所での手続きが必要になってきます。

 この点をご存じの方は少ないです。例えば夫が亡くなって妻と未成年の子が2人残された場合、遺言がないと遺産分割をして相続手続(預貯金解約、不動産名義変更)を進めることになりますが、その時遺産分割では 妻(つまり子供の母)と子1、子2では利益が相反してしまいます(例え未成年なので母が子どもを育てることになるから実質お金は母がもらうべきとも考えられます)。その場合は子1、子2についてそれぞれ特別代理人を家庭裁判所に選任してもらわなければなりません。非常に面倒ですがそうしないと相続手続が進みません。

面倒な遺産分割協議

 特別代理人選任の申立時に遺産分割協議の(案)も同時に提出することになります。その遺産分割案で子1、子2に法定相続分の財産が確保されていることを家庭裁判所が確認すると特別代理人が選ばれます。

 子1、子2に1人づつ、2人の特別代理人が選ばれます。裁判所がOKを出した遺産分割協議書に母、子1の特別代理人、子2の特別代理人が署名、押印、印鑑証明書を提出して適法な遺産分割が完了します。かなり面倒ですね。

お勧めの方法

 ここで遺言の必要性を感じた方も多いのではないでしょうか?でも公正証書を作るのは大変だし(参考:司法書士の”ありお”が自分の遺言をつくって思ったこと)自筆で遺言書いてもよかったけど要件があったような?という方の為にオススメの方法です。

  1. 若いうちは 「といあえず遺言」という形でポイントだけ絞った簡易な遺言を自筆で作成しておく(いわゆるお守りがわり)
  2. 年を取ってきたら(どこかの節目「子供が独立したら」とか「60歳になったら」)公正証書遺言に作り替えておく

という2段構えでいく方法です。

書き方の事例

 ちなみに、上記1. のとりあえず遺言のサンプルは下記のような簡単な感じで法的要件を満たします。全部を直筆で書きます。できるだけ完結で、もし書き損じてしまった場合には書き直した方がよいでしょう(訂正方法も厳密な決まりがあります)。最後に日付、氏名を記載し、押印です(認印でOK、もちろん実印でもOK)。

封書に入れてもいいし、そこは自由です。自筆証書遺言はせっかく作成したのに誰にも見つからない可能性があるので遺言書を保管している場所を伝えておくようにしましょう。

サンプル自筆証書遺言

 

遺言書

1 私は、配偶者○○(昭和○○年○○月○○生)に私の全財産を相続させる。

2 遺言執行者として、配偶者○○を指定する。

                       令和○○年○○月○○日

                        氏名 法務 太郎 ㊞

 一番シンプルな遺言です。法務太郎さんが他界した後、この遺言書を法務太郎さんの亡くなった時に住んでいた住所を管轄する家庭裁判所で検認してもらう必要があります。(検認は遺言書と法務太郎さんが亡くなったことがわかる戸籍や一定の書類を併せて検認申立を行います。およそ一か月くらい手続がかかりますが)特別代理人を使う手間よりも断然マシかと思います。