相続関係

日頃は馴染みがないけど実は色々ある「認知」のいろいろ

はじめに

こんにちは!
今日は、日頃馴染みが薄い認知についてお話ししたいと思います。

 

認知というと皆さん何を思い浮かべますか?

テレビドラマとかの相続争いのシーンでしょうか?

 

こういう話を現実に見聞きしたことがない方が大半かと思いますが、司法書士という職業は相続手続の業務に携わることが多く、日常的に多くの人の戸籍に触れます、その中で認知された子供は一定程度いらっしゃいます。

 

その場合には相続権はどうなるの?

父が認知に協力しない場合どうしたらいい?、認知する前に死んだ父に対して手立てはないのか?

認知してあげたいのだけど、諸々の理由でできない。何か手立てはないのか?

 

など認知についてのいろいろなお話しをしていきたいと思います。

認知って何?法律上の効果

婚姻関係にない男女間の子は母と子は産んだ事実により明確になりますが、父と子は法律上明確にはなりません。そこで認知をすることで法律上の父子関係が定まります。

 

父子関係が定まるということは父子間に相続権ができるという事で、その他に扶養義務が発生しますし極めて重要な身分行為です。

父親自らする任意認知と子が訴えてする強制認知

・認知は父が市区町村の戸籍係に届け出ることでできます。父親自らがするので任意認知といいます。

また、父が認知をしてくれない場合には子が父に認知を求めて訴えることも可能です。(訴えによる強制認知)

さらに、父が死亡しても死後3年以内であれば訴えることにより認知の請求ができます。(死後認知)

 

(訴えの相手は検察官になります、父は既に他界しているのでいません。。)

訴えのメリットは認知が認められることで相続権が発生することです。

つまり、認知を認められた子は相続できることになりますね。

 


子が成人に達している場合父が認知をする場合には子の承諾が必要

父子間には法律上の扶養義務があります。子が幼いころには父子関係がないので扶養をしていなかった父が、自身が年老いてきたら子を認知して、その子から面倒を見てもらおうという身勝手な行為を無制限に認めないという側面があります。

 


子がまだ胎児の時には母の承諾を得て父が認知できる

これも無制限に認めるとちょっと大変な事になります。妊娠中の女性が、心当たりもない男性からいきなりお腹の子を認知されたらびっくりしますよね。そんな事がないようにあらかじめ胎児を認知するには母親の承諾が必須になっています。

女性の名誉を保護する側面もあります。

 

子が亡くなっていても認知できる。(条件付)

亡くなった子を認知して何かいいことがあるのかな?と思われるでしょうが、亡くなった子にさらに子がいたら状況は一変します。つまり祖父―子―孫の直系血族関係ができ、相続権が発生する訳です。

亡くなった子を認知することができるのはその亡き子にさらに子がいる場合にできる訳です。その場合は祖父から孫に直接相続できます(代襲相続)


遺言でも認知ができる

父が生前中に様々な事情から婚外子を認知することができないこともあります。

そんな場合は遺言でも認知することができます。効果は遺言者が死亡した際に発生しますが、認知は戸籍の届出をすることによってしなければならないので、認知届を提出する必要があります。遺言者はもう死んでいるので行けませんね。

そのような場合は遺言執行者が行いますので、忘れずに遺言執行者の指定をしておきましよう。


もちろん、子が成人の場合は子の承諾を得なければ、胎児認知の場合は母親の承諾を得なけ
れば遺言執行者といえども認知届を適法にできません。

 

・認知じゃなくて養子にしたら?という考え(養子との違い)

法律上の父子関係を生じることが認知と説明しましたが、中には養子でもいいんじゃないか?

 

認知より養子の方がイメージ的にいいかな。。。なんて思われるかもしれないので、説明すると認知は生物上は血をわけた子供だが、法律上の父子関係がなかったものを父子関係を作る制度です。

 

一方養子縁組は血縁関係(生物上の親子関係)はなく、法律上の父子関係もなかったものを新たに父子関係を作る制度です。

(ただし、祖父が孫を養子にとることは時折あるので血縁関係がまったくない訳ではないです)

 

また、養子縁組についてさらにもう少し説明すると、未成年者を養子縁組するには、原則家庭裁判所の許可が必要となります。

 

さらに、子供が15歳未満の場合には子の法定代理人(親権者、未成年後見人、児童福祉施設の長)の代諾を得て縁組をする必要もあります。代諾とは子の代わりに養子縁組を承諾することです。つまり代諾と家庭裁判所の許可が必要。

もう一つハードルがあり、父になろうとする男性に妻がいる場合には夫婦そろって未成年の子を養子としなければなりません。

 

子の福祉を保護する為です。(妻の実子を夫が養子とする場合には家庭裁判所の許可は不要です)

このように子供の権利が害されないように、未成年を養子にとるにはハードルが高いのです。

さいごに

今日説明した認知ですが、子供にとっては相続権と扶養を求める権利が法的に認められる大変重要な身分行為です。

重要な身分行為であるが故に周囲に与える影響も大きく、認知された子がいたことを妻や嫡出子(婚姻中の夫婦の子)が知らなかった場合には相続争いになることが想像できます。

男性が生前に認知した場合にはやはり遺言を作っておくことがとても重要だと思います。

 

前回の未成年後見、今回の認知と身分行為にまつわる内容でした。

 

次回は、財産関係の法改正シリーズで預貯金相続について、凍結された故人の銀行口座を自分の相続分だけでも引き出したい

という方の為の預貯金相続について話したいと思います。お楽しみに。